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2023年6月13日 14:06
白梅では、学年に関係なく学習に参加できる「SFP(22世紀しらうめフロンティアプロジェクト)」を実施しています。
今回の第19回SFPでは『フィールドとラボをつなぐ植物科学』と題して東京大学大学院准教授の矢守航先生にご講演をしていただきました。
矢守航先生は昨年度も本校でご講演いただきました。昨年度の記事は以下になります。
第12回SFP:『未来の食卓~食べ物はどうやって作られる?~』
今回は食糧問題を解決するためにはどうしたら良いか? というテーマを中心にお話をしていただきました。
最初は昨年も本校の生徒に大好評だったクイズが出題されました。植物の驚異的な生態「テッポウユリの種は何メートル飛ぶのか」「世界一大きなバオバブの木の円周は何mか」「アスパラガスは一日に何cm成長するか」などを楽しくクイズ形式で学び、答えた生徒には東京大学のグッズを進呈していただきました。
そこから植物のそのような生態を人間が上手に利用していることを説明していただきました。今現在2050年までに主要穀物を70パーセント増加させなければ、世界は食糧不足に陥るといわれています。その問題を解決するために矢守先生は「光合成の促進による作物生産性の向上」に取り組んでいらっしゃいます。
また野外の環境を受けずに植物を育てるための植物工場の紹介をしていただきました。私たちが植物を育てるために必須だと考える土は基本的に使わず、溶液を使って栽培することが多いことに、生徒たちは驚いていました。ただ、まだまだ問題が多く最適化されているわけではありません。例えば植物体の下の葉っぱが老化しやすく、大きな収穫ロスにつながることもあります。
そこで通常上から下に当てる光を、下から上へ光を当てられないかと矢守先生は考えました。そうすることで収穫量が20パーセントアップし、廃棄率を50パーセントオフにすることができました。少しでいいのでものを見る角度をかえたり、違う観点から見ることができれば新しい発想につながっていくことを、講話の中で教えていただきました。
それらのことをふまえて最後に矢守先生は生徒たちにいろいろな視点に立ち、自分たちのできることを考えていくことが大事だと強調されていました。今後、避けることができない食糧問題に立ち向かうには、今を生きる人たちが解決方法を見つけていかなければいけない問題です。生徒たちひとりひとりが今回の講演で新たな視点を得て、未来に進んでいける可能性を模索するきっかけになった機会だと思います。
講話の後には、質疑応答を行いました。矢守先生には、生徒の質問にもひとつひとつ丁寧にお答えいただきました。
身近な問題を研究し続ける矢守先生の講話は、生徒にとって今後の探究心が大いに刺激されるものになりました。前回に引き続き、今回も素敵な講話をしていただき、本当にありがとうございました。
《生徒の感想:一部》
・専門家や、沢山の知識がある人ほど固定観念にとらわれやすくなって しまうと思うため、知識の少ない私たちやもっと小さい子供に、この 問題を考えてもらえば、様々な視点が生まれ、新たに気づくことがで きると思う。 食糧不足は世界規模の問題だが、1人1人が向き合うことが大切だと 思った。これからは食糧不足以外の問題や一見すると難しそうな問題 についても考えてみたくなった。
・少ない食料をまんべんなく行き渡らせて、飢餓で亡くなる人を減らそうとする取り組みも重要だが、少し視点を変えて、そもそもの生産する植物の量を増やす研究を行う、など、SDGsを達成するためにはいろいろな角度で対策をすることが大事だと思った。なので、これから 私は、SDGsだけではなく、日常的な問題に対しても、複数の視点を持ち、解決策を考えていきたい。
・食料問題を植物学の視点で考え、専門分野で考えなくても、学校でで きることを考えたり、身の周りでできることを考えたいなと思いまし た。そして、面白い植物がたくさんあることがわかったので(ラフレ シアなど)気になったものは調べてみたいです。
・植物には命がないようですが、実は植物は自分たちの繁栄や、生きる ための術を多く持っており、それを自分たちが応用するという事例が 実際にあり、どこからでも学び、活かすことができるのだということ を知れたので、今後、自然のもので実生活で活かせるようなことを見 つけられるように、スマホで検索して知った気になるのではなくて、 実際に見て知る機会を設けたいと考えました。(お花見など)